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「まだ大丈夫」が一番危険? マンション大規模修繕、最適な周期と劣化サインの見極め方

この記事で分かること

✅ 「12年周期」を鵜呑みにする危険性
✅ オーナー様が自分で確認できる「5つの劣化サイン」
✅ 【部位別】本当の修繕周期の目安
✅ コスト削減に繋がる「建物診断」の重要性

「ウチのマンション、築12年だけど、まだ外壁はキレイに見える」
「修繕積立金も値上げしたくないし、次の理事会に先送りできないか…」
「大きなひび割れもないし、“まだ大丈夫”だろう」

アパート・マンションのオーナー様や管理組合の理事様にとって、大規模修繕の「タイミング」を見極めるのは、最も難しく、責任の重い仕事の一つです。
一般的に「12年周期」と耳にしますが、その根拠は曖昧なまま、「まだ大丈夫そうだから」と先延ばしにしてしまうケースが非常に多く見られます。

しかし、その「まだ大丈夫」という油断こそが、将来、何倍にも膨れ上がった修繕費用となって返ってくる「最大の危険信号」なのです。

建物は、オーナー様が思うよりも静かに、しかし確実に劣化が進行しています。
この記事では、「12年周期」神話のウソと、オーナー様ご自身でも発見できる建物の「SOS=劣化サイン」の見極め方、
そして本当の「最適な修繕周期」について、専門家の視点から徹底的に解説します。

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【危険!】「12年周期」神話の落とし穴。先延ばしが招く最悪の事態とは?

多くの長期修繕計画で「1回目の大規模修繕は12年目」と設定されています。
これは、外壁塗装(シリコン系塗料)やシーリング、
防水層の「メーカー保証」や「標準的な耐用年数」が概ね10年~12年であることから来ています。

しかし、これを「12年経つまでは何もしなくていい」と誤解するのが、最大の落とし穴です。

立地環境で「劣化速度」は2倍変わる

建物の耐用年数は「置かれた環境」に大きく左右されます。

  • 海沿い(塩害地域): 潮風に含まれる塩分が鉄部を急速に錆びさせ、コンクリートを劣化させます。
  • 大通り沿い(排ガス): 排気ガスに含まれる酸性物質が塗装面を傷め、汚れも付着しやすいです。
  • 日当たりの良い南面: 紫外線を強く浴びるため、シーリングや塗装の劣化(色あせ)が早まります。
  • 日当たりの悪い北面: 湿気がこもりやすく、コケやカビが発生し、塗膜の劣化を招きます。

過酷な環境下では、耐用年数12年の塗料がわずか8年~10年で機能を失うことも珍しくありません。

先延ばしが招く「修繕費の増大」という悪夢

「まだ大丈夫」と先延ばしにした結果、どうなるでしょうか?
建物の劣化は、ある時点から「二次被害」を伴って急速に進行します。

ひび割れ

ひび割れ

(例)小さな「ひび割れ」を放置した場合

【初期】塗装面のひび割れ
▶ 対策:ひび割れ補修+塗装(費用:

【中期】「まだ大丈夫」と放置
▶ 状態:ひび割れから雨水が侵入し、内部のコンクリートが中性化。

【末期】水が鉄筋に到達
▶ 状態:鉄筋が錆びて膨張(爆裂)。コンクリート片が剥落する。
▶ 対策:劣化したコンクリートを全て除去し、鉄筋の防錆処理、モルタルで埋め戻し、塗装(費用:甚大

初期段階(塗装表面)で対処すれば安く済んだものが、内部(コンクリート躯体)まで劣化が進行してしまうと、
補修費用は文字通り桁違いに跳ね上がります。

「まだ大丈夫」という油断は、将来の莫大なコスト増を予約しているのと同じなのです。

【セルフチェック】今すぐ確認!オーナーが“目視”できる危険な「劣化サイン」5選

専門家でなくても、建物の「SOS」に気づくことは可能です。
ご自身の目で、以下の5つの「劣化サイン」が出ていないか、今すぐチェックしてみてください。

サイン1:【外壁】チョーキング(触ると粉が付く)

コラム チョーキング

危険度:★☆☆(劣化の初期症状)

日当たりの良い外壁を手で触ってみてください。手にチョークのような白い粉が付きませんか?
これは「チョーキング(白亜化)」と呼ばれる現象で、紫外線や雨風によって塗料の表面が劣化し、
防水機能が失われ始めている「最初のサイン」です。

サイン2:【外壁】ひび割れ(クラック)

コラム ひび割れ

危険度:★★☆(すぐに対応検討)

外壁に、髪の毛のような細い線(ヘアクラック)や、ミミズ腫れのようなハッキリしたひび割れ(構造クラック)はありませんか?
特に幅0.3mm以上のひび割れは、雨水が内部に侵入する「水の通り道」となります。
先ほどの「悪夢の例」に直結する、非常に危険なサインです。

サイン3:【外壁】塗膜の「浮き」「剥がれ」

コラム 外壁剥がれ

危険度:★★★(緊急対応レベル)

塗装が水ぶくれのようにプクッと「浮いて」いたり、ベリベリと「剥がれて」いたりする箇所はありませんか?
これは塗膜(塗装)が完全に機能を失い、コンクリート(下地)が剥き出しになっている状態です。
コンクリートが直接雨水に晒され、急速に劣化が進むため、緊急の対応が必要です。

サイン4:【鉄部】錆び(さび)・腐食

コラム サビ

危険度:★★☆(美観と安全性の低下)

共用階段、手すり、PS扉(メーターボックスの扉)など、鉄でできた部分を見てください。
赤茶色の錆びが発生していませんか? 錆びは「鉄のガン」です。
放置すれば内部まで腐食が進み、強度が低下して非常に危険です。
錆びが流れて外壁を汚す「もらい錆び」も、物件の美観を著しく損ねます。

サイン5:【シーリング】ひび割れ・肉やせ

コラム シーリング

危険度:★★☆(雨漏りの主要因)

窓サッシの周りや、外壁パネル(サイディング)の継ぎ目にある「ゴム」のような部分(シーリング)を見てください。
カチカチに硬くなったり、ひび割れたり、痩せて隙間ができていませんか?
シーリングは、塗装よりも先に(7年~10年で)劣化することが多い「最重要防水ライン」です。ここが切れると、即、雨漏りに繋がります。

これらのサインが一つでも見つかったら、それは「まだ大丈夫」ではありません。
「そろそろ専門家の診断が必要」という明確なサインです。

「劣化サイン、ウチにもあったかも…」
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【部位別】に見る、本当の「修繕周期」の目安

「12年で全部一斉に!」と考えるのは、実は非効率かもしれません。
建物を構成する「部位」によって、耐用年数(=修繕周期)は異なります。
これを知ることで、「今回はここを優先的に」という賢い計画が立てられます。

部位 一般的な修繕周期(目安) 主な劣化サイン
鉄部(階段・手すり等) 3~5年 錆び、塗膜の剥がれ
シーリング(目地・窓周り) 7~10年 ひび割れ、肉やせ、剥離
外壁塗装(シリコン系) 10~15年 チョーキング、ひび割れ
屋上防水(ウレタン等) 10~13年 膨れ、ひび割れ、水たまり
外壁塗装(フッ素・無機系) 15~20年 (耐用年数が長い)
給排水管 20~30年(※要調査) 赤水、漏水、詰まり
POINT!
この表で注目すべきは、「シーリング」や「鉄部」の劣化が、外壁塗装より“早く”やってくることです。
「塗装(12年)まで待とう」と、シーリングの劣化を放置すると、そこから雨水が侵入し、塗装がまだ生きていても内部の劣化を招いてしまいます。
「12年周期の塗装」と「7年周期のシーリング」をどう組み合わせるか、といった専門的な計画がコスト削減には不可欠です。

「ウチの塗料、どのグレードがいい?」
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【最重要】「劣化サイン」を見つけたら…最初の一歩は「専門家による建物診断」

セルフチェックで「劣化サイン」を見つけることは重要ですが、それはあくまで「きっかけ」にすぎません。
「このひび割れは、表面だけなのか?内部の鉄筋まで達しているのか?」
「この屋上の膨れは、部分補修で済むのか?全面やり替えか?」

これらを正確に判断することは、オーナー様には不可能です。
人間の健康診断と同じで、目視(問診)で見つかった異常を、レントゲンやCT(専門機器)で詳しく調べる必要があります。

それが、大規模修繕における「専門家による建物診断(劣化診断)」です。

建物診断で何をするのか?

  • 目視・触診: 全体の劣化状況(汚れ、コケ、色あせ)をプロの目で確認。
  • 打診調査: 専用のハンマーで外壁を叩き、音の違いで「浮き」や「内部の隙間」を発見する。
  • 赤外線調査: 赤外線サーモグラフィカメラで、外壁タイルの「浮き」や「雨水の侵入箇所」を非破壊で特定する。
  • ドローン調査: 人が近づけない高所(屋根や外壁高層部)を安全かつ詳細に撮影・確認する。

この診断結果をまとめた「診断報告書(=建物のカルテ)」こそが、大規模修繕の「設計図」となります。

「12年経ったから全部やる」という非効率な計画ではなく、
「診断の結果、A棟は塗装が必要だが、B棟はシーリングの打ち替えだけで良い。屋上は部分補修で済ませよう」
という、メリハリの効いた「最適な修繕計画」を作ることが可能になります。

これが、結果として「無駄な工事をしない」=「最大のコストダウン」に繋がるのです。

【結論】最適な修繕周期とは「カレンダー」+「劣化診断」で決まる

「まだ大丈夫」が危険である理由、そして「劣化サイン」の見極め方について解説してきました。

結論として、マンション・アパートの「最適な修繕周期」とは何でしょうか?

12年周期」というカレンダー(時間計画)

劣化サイン」に基づく専門家の診断(状態保全)

この2つを組み合わせて判断することです。

大規模修繕 成功へのサイクル

  1. 新築・前回の修繕から8~10年が経過する。
  2. 「まだ大丈夫」と思わず、「そろそろ診断の時期だ」と意識を変える。
  3. 専門家に「建物診断」を依頼し、建物の「カルテ」を作成してもらう。
  4. その診断結果に基づき、「本当に今やるべき工事」と「次回でも良い工事」を仕分ける。
  5. (12年目にこだわらず)最適なタイミングで、最適な規模の工事を実施する。

「まだ大丈夫」という“感覚”に頼るのではなく「劣化サイン」という“事実”と向き合い、
「専門家の診断」という“根拠”に基づいて計画する。

この「早期発見・早期治療(診断)」のサイクルこそが、建物の寿命を延ばし、
トータルの修繕費用を抑え、オーナー様の大切な資産価値を守る唯一の方法なのです。

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